強い日差しが肌に刺さる暑い夏。
一人の少女が舗装もされていない畦道をただ黙々と歩く。
目指すは小さな野山にある寂れた神社。
石段を登ると小さめの鳥居とこれまた小さな社と賽銭箱があった。
周りは大きな木々に囲まれ、先程の畦道よりは涼しくなったもののまとわりつく暑さには適わない。
少女は叔母に頼まれたとおりに花とお供え物を置く
「早く帰りたい・・・。」
ぽつりと弱音が口をついた。
少女は立ち上がり元来た道を戻ろうとしたところで、突然名前を呼ばれる。
「あきっ」
お香のような、懐かしい香りに包まれたかと思うと突然、全身がふわりと何かに包まれた。
目の前が一瞬で白に染まり、『あき』と呼ばれた少女、古田 亜希は困惑に頭を巡らす。
時折きつく体を締められる感覚に自分は何者かに抱きしめられているのだと、うまく回転していない頭で考え、危機感を覚えた。
ー恐い、どうしよう、逃げなきゃっ!
そんなことが頭を巡り必死に引きはがそうと暴れてみるも亜希を抱えたものは離れず、その間も匂いを確かめるように鼻先を髪の間に埋めながら呟き続ける。
「あき、会いたかった。あき・・・。」