鋭い五感を持つトルガは、昔からその能力に悩まされていた。


聴きたくもない悪口(あっこう)

嗅ぎたくもない悪臭

見たくもない嘘偽り

味わいたくもない鉄(血)の味


人一倍敏感な肌は、痛みすらも死ぬよりつらい拷問となる。


まさに生き地獄と化した彼女の人生は、いつしか優れた五感のせいで悪人へと成り下がってしまった。


悪も正義も常識も。
五感が優れた分、人一倍劣ってしまう。


誰も、何も、教えてはくれない。


いつしかトルガは奴隷となった。
親に疎まれ行く宛もなくさ迷う者の末路。