基本、魔族は夜の方が魔力及び人間への影響が活発になるらしい。
ならば今夜が勝負時か。
「おいリー……」
「(ボソ)トルガ、ここでは本名は隠すとしよう」
「は?」
なんでだよ、キョトン顔で尋ねるトルガにリークはやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
それにトルガがこめかみをピクピクさせたことは、言うまでもない。
とにかくも、二人は村人に気づかれないよう小声で話し合うことにした。
「まず第一、この村は魔族が出ると言われただろう。なら僕たちの正体は隠した方がいい」
「なるほどな。で、二つめは?」
「そう急(せ)かすな。次に、僕たちの身分がバレれば至極面倒臭いことになる」
「あ?…あー、そういやお前、王子だもんな………って、おい待て。俺はもう見るからにバレてんだろ。せめて鎖外せや」
「煩いな。それに商人や旅人も奴隷を扱っているだろう?僕がお前を連れていても、なんら不思議はない」
「そーゆうもんかよ……」
つまりお前だけ正体隠せばいいんだな?、小声で話すトルガにリークは頷いた。