あたりには魔族騒動のおかげで誰もいない(※例の民間男除く)。

しかし念のため崩れた建物の陰に隠れる二人は、どうやら兄弟のようだ。



「いやあ、意外と錬金術にハマっちまってねえ。遠い異国の地では錬金術が盛んだって言うからつい……」


「で、7年間も城を空けた……と。流浪生活はさぞ楽しかったでしょう。なにせあなたの分まで僕は仕事をしていましたから」


「うっ……で、でもお嬢ちゃん……トルガとずっと一緒だったんだからいいじゃないかい。

俺だってトルガと一緒にいたかったしい、一緒に遊んでトルガの笑顔を一番近くで見ていたかったんだよ?

それを独り占めしてたリークには嫉妬するねえ、まったく」



やれやれ、と言うかのように肩を竦(すく)めるロアロの言葉にぴくりと反応するリーク。



「笑顔……?一番、近くで……?

っ、そんな、そんなこと……っ」


「? リーク、どうしたんかね」


「………いえ、なんでもありません」



ロアロが顔を覗き込もうとするとフイッと顔をそらして握った拳を隠すリーク。