いやしかし、なぜ民間男は黒獅子を見て恐れないのだろうか。あれか、気づいてないだけの阿呆だからか。

なんにせよ、この男の命もここまでか。南無三。



[人間ガ……戦イノ邪魔ヲスルナアッ!]



黒獅子が吠え、その勢いで風が巻き起こり民間男を吹き飛ばした。



「がッ……?!」


「民間男っ!」


「だからんな呼び方すんなやっ、ごふっ……」


「なんだ、元気そうだな」


「おまっ、奴隷のくせに不躾だなあおい!」



吹き飛ばされてこの生命力。賞賛。

しかし民間男に気をとられたトルガは、黒獅子が自分のすぐ後ろへ迫ってきていることに気づいていなかった。


気づいた時には既に遅くて。



「しまっ……」


[コレデ終ワリダアアアアッ!!]



やばい、喰われる


そう瞬時に悟ったトルガは、思わずギュッと目を瞑った。


だけどそれは杞憂のようで。