こつ、こつ……長い廊下を歩く音が木霊する、とある晩。

勿論廊下の窓から見える空には月などなく、黒々とした闇の世界が広がっている。


と、足音が止まり、ただ静かな廊下には一人の青年の溜め息だけが響いた。


青年の目の前には無駄に施された装飾品のついた扉。その扉の前で青年は立ち往生している。


しかし中から「入れ」と威厳のある声が聞こえたため、青年は渋々といった面持ちで、されどドアノブを開き部屋の主へと向ける顔には、はりつけたような笑みが浮かんでいた。



部屋の主はこの東の国の王。


そして青年は、この国の王子である。