いつの間にかトルガは主人であるリークをだっこしている(というか、トルガの肩に肘をついて後ろの追っ手を楽しげに見つめているため、トルガはリークの膝裏のみ支えている。)という状況。


そのためリークは角材をひょひょいっと避けるという、意外と至難な業をする必要はないようだ。



「おいリーク!追っ手はどうなってやがる?!」


「さすがトルガだ。あの者たちも息切れしてペースが落ちている。このまま行くと撒(ま)けそうだ」


「っは、そうかよ!つかっ、はあっ、はっ、お前もういい加減下ろしていいよなっ?俺もそろそろ……っ」


「もう限界か?そんな軟弱に育てた覚えはないんだけどなあ」


「育てられた覚えっつーかイジめられた覚えならありますけどね?!

つうか俺を軟弱呼ばわりするんならテメェの足で走りやがれっ!」


「嫌だ、疲れるし」


「てめぇええええええッ!!」



二人分の荷物を背中と片手。
もう片手には王子サマ。
オマケにこの状況で場違い(身分違い)な会話をするとな。


若者は知らないが、幼き王子を知る40以上の大人たちは、その光景を微笑ましげに見つめていた。


ああ、王子が笑っていらっしゃる。と。