「失敗しちゃったん? ま、日向子ならやりそうだよな」


「…………」



笑いながら頭を撫でてくれた大上くんにわたしは何も言わず視線を床に落とした。



ちゃんと渡したかったなぁ。

喜ぶ顔が見たかったな。


ソファにいつものように並んで座ってチョコを食べる大上くんの横顔を見つめる。


今日はわたしも一緒に食べる。


だって今、夜じゃないし。
食べてもいい時間帯だもん。



「今日ね千絵と一緒にバレンタインチョコ作ったの。だけどちょっとしたハプニングがありまして……」


「ハプニングって?」


「……猫に持って行かれたの」


「……ふぅーん」



信じてない! この人信じてないよ!

たしかに猫が紙袋をくわえてどこかへ走っていっちゃうなんて信じがたい話かもしれないけども。