「ただいまぁ……」



見慣れた靴に視線を向けつつブーツを脱いで玄関のドアの鍵を閉めた。


テレビの音も聞こえないし、部屋の電気もついてない。

大上くんはきっと寝てるんだろうね。



「寝てるのー?」


「……んー、寝てた」


「わっ……起きてたの」


「たった今起きた」



だるそうに髪をくしゃくしゃしながら起きあがる大上くん。


寝るんならベッドで寝ればいいのに。

ソファで寝るなんて背中痛くすると思うけどなぁ。


コートを脱いでハンガーにかける。


視線を感じて顔を向けると眠そうな目をした大上くんがこっちを見ていた。


発せられる言葉はたぶん『腹減った』だろう。



「……なんか、服汚くね?」


「へっ?」



かけられたコートを指さす大上くん。


よく見てみるとたしかに汚れていた。

……あ、もしかしさっき女の子をおんぶしたときに靴でも当たっちゃったのかな。