すっと視線を落としたときどこからかやってきた猫がすぐ自分の足下にいた。
い、いつのまに!?
鳴き声も気配もなかったのでわからなかった。
すごくびっくりして身体を揺らしてしまった。
背中にいる女の子がしがみついてきたので慌てて謝る。
「ごめんね。落とさないから安心して──……っあ、ちょっ!! 待って!」
紙袋をくわえた猫が逃げてゆくその瞬間を見てることしかできなかった。
待って、なんて猫に言ったってわからない。
猫は茂みの中へと姿を消した。
ウソ……
ウソでしょー!?
「チョコ……」
呆然と女の子をおんぶしたまま突っ立っているとさっきの礼儀正しい男の子が回り込んでわたしの前に立った。
「あの猫追いかけましょうか?」
「う、ううん! いいの! 追いかけなくていいよ」
「でもあの袋お姉さんのやつ……」
「何も入ってないただの紙袋だよー」