礼儀正しい男の子はぺこりと頭を下げ、顔を上げるとわたしの目をじっと見つめた。
ビー玉みたいなまん丸とした綺麗な黒目。
お願いします、ともう一度頭を下げる男の子。
……断れるわけがない。
「あー……うーん。ちょっと背伸びすれば取れるかなぁ?」
鞄と紙袋をとりあえず地面に置いて、ボールがある場所を見上げた。
パッと見た感じ届きそうな高さだったのだけれと木の下に立ってみると……
「んーっ……」
全く届かない。
ボールに指先がかすりもしない。
小学生の子たちの視線を受けながら私は精一杯つま先立ちをしてボールに手を伸ばす。
ぴょんぴょん跳んでみてもダメ。
何か棒になる物はないかと探してみたけど使えそうな物はない。
どうすればいいんだ。