かあっと顔が熱くなってくのが自分でもわかる。

あれはただの事故だったんだよ。


掴まれている腕にちらっと視線を流すと大上くんが軽くため息をついた。

あいているもう片方の腕がわたしの方に伸びてきて、頬に触れるのかと思いきや……



「んっ……?」


「ばーか」



服の袖で口を拭うようなその仕草にわたしは目を見開いて彼を見上げた。


ゴシゴシと肌に服が擦れて少しヒリヒリする。

服にまでしみついた大上くんの香水の香りが鼻をくすぐり、頭がクラっとする感じになる。



「い、今リップ持ってないんだからやめてよねっ……!わたし乾燥肌なんだから……」



声がうわずってしまった。

大上くんの前をまっすぐ見れない。


手を払いのけると掴まれていた腕もすんなりと離してくれた。


心臓に悪すぎる。いきなりこんなのって……!