なんとも自然に手を掴んで走り出したものだから、わたしは何も言えなかった。
手、つなぐの好きだったななんて思い出してしまう。
過去を思い返してはふたりの思い出を探してる。
「駆け込み乗車はおやめください」
「うるせ。これで行った方が乗り換え少ないんだよ」
「乗り換え? なんで?」
地元に帰るだけだから一本で行けるはずだけど。
どこに行こうとしてるの?
「集合場所が変わったんだよ」
ケータイの画面を見せられ、まじまじと見つめる。
電車の中はガヤガヤしててわたしたちの喋り声なんて目立たない。
鞄の中にあるケータイは家を出てから一度も取り出していない。
だから連絡が来ていたことに気づくはずがない。