一応部屋の鍵はバッグの中にあるんだよね。

何日ぶりだろう、自分の部屋へ帰るのは。


無言だけど手だけはしっかりと繋いでくれていて。

でもわたしは握り返せないでいた。



「……鍵、あるんだろ。日向子の部屋でいいよな?」


「……うん」



バッグから鍵を出して大上くんに渡す。


大上くんに背中を押され、足を踏み入れる。


実家の方とこっちの部屋、少しにおいが違うなぁなんてぼんやりと思った。


二つ並んだマグカップが目に入り、横に視線をずらす。


おそろいのマグカップ。



──『幸せだよ?だって、おそろい嬉しいんだもん』

──『んな幸せそうな顔してんなよ』



わたしって意外と記憶力がいいみたい。