朝食を作ってお父さんが食べている間にお弁当の用意を済ませ、キッチン周りを軽く掃除する。

不自然にならない程度に動き回って、目を合わさないように。


「お弁当、ここ置いとくよ」

「お、ありがとう。じゃあ行ってくるな」

「いってらっしゃい」


廊下に出て行くスーツの背中に声を掛けて、私はようやく息をついた。


別に変だと思われてないよね――?


弟とキスをしたなんて、気持ちをぶつけられたなんて、絶対お父さんには知られちゃいけない。


家族のために頑張って働いてるお父さんの心を、乱すようなことはしたくない――


冷蔵庫を開けて、中のものをチェックしながら買い出し用のメモを携帯に打ち込む。


すると、後方で微かに階段がきしむ音が聞こえた。