それは温かくて、柔らかなキスだった。
胸が苦しくて、なぜだか泣きたい気分になる。
それなのに、どこか心地いい。
頭の片隅で、全然違う、と思った。
石川君のキスとは、全然――
唇が離れると、そのまま瑞貴に抱きしめられた。
大きいけれどまだなんとなく頼りない、しなやかな腕。
左手にドライヤーを握り締めたままで、
私はただ静かに、眠りに落ちる前みたいな気持ちで、その腕に抱かれていた。
それはまるで夢の中から現実を見つめているような、
心地いいようで、心もとない、
真夜中の空に浮かんでいるみたいな、
安らぎと恐怖が同居する、
不安定な感覚――