自転車を止めてカゴから買い物袋を取り出す。
 

明日テストがあったり、

たとえ今日失恋を経験していたとしても、

私はごはんを作らなきゃいけない。



温かくて美味しいごはんが待ってる家。


それは、家族がいるという幸せの象徴なのだから――
 

買ってきた食材をテーブルに置き、私は制服の上からエプロンをかけた。

先に下ごしらえだけしておこうとニンジンの皮を剥き始めたとき、家全体を震わせるように玄関の扉が閉まった。


心臓が大きく跳ね上がる。
 

お父さんがこんな時間に帰ってくるはずはないから……。
 

考えているあいだにドアが開き、姿を現す、弟――


「み、ずき」


「ただいま」