不可解な感覚に目をつぶったまま耐えていると、やがて合わさった唇は離れていった。 おそるおそる目を開けた途端に、ぎゅっと大きな腕に抱きしめられる。 首元から漂う、男物の香水。 石川君の匂い―― 抱きしめられながら、心臓が鳴りっぱなしだった。 それは形容しがたい、 自分でも理解できない不穏な響き。 わけのわからない胸の高まりを、頭の芯では、冷静に見極めていた。 この鼓動はきっと、ときめきではないと――