タイミングがよかった、と言ったら失礼かもしれない。
けれど、それでも他に断る理由がなかったから、私は彼の申し出を受けた。
石川君のことはまだよく知らないけれど、付き合っていくうちに好きになればいいと思った。
彼はおしゃれだし、学年の中ではわりと目立つグループに所属する1人で、悪い噂も特に聞いたことがないから。
そんなことを考えながら私は自嘲する。
私ってきっと、ものすごく打算的な女だ。
自宅に着くと、私は荷台から降りて自転車を塀沿いに停めた。
そのまま門扉の前まで歩いてから石川君に向き直る。
「帰り、平気?」
「あぁ、うん――」
「……」
見上げていた顔が不意に近づき、石川君の柔らかい唇が私の唇に触れる。