おにぎりひとつとデザートのフルーツが私の今日のお弁当だ。
「あー、ちょっと、ダイエットしようかなって」
「いや、必要ねーだろ」
即座に言って、石川君は自分の手元に視線を落とした。
「一緒に食おうぜ」
にかっと白い歯を見せて、おかずが入った容器をふたりの真ん中に置く。
その笑顔や彼の言動に、体が感じていた緊張が少しずつ解けていくような気がした。
「うん、ありがとう」
うららかな屋上で、彼氏と並んでお弁当を食べる。
まだまだ幸福を感じる域には達していないけれど、これはこれでそこそこ幸せなことなのかも。
昼食を終えて、他愛のない話をした。
このあいだ石川君に嫌悪感を抱いてしまったなんて嘘みたい。
それほど穏やかな時間だった。
大丈夫。
きっとこのまま私は石川君といい恋愛ができるようになる。
心の中でそう思った瞬間、石川君の切れ長の目にじっと見つめられた。