「あいつが、俺が使ってる参考書が知りたいっつーから、一緒に本屋に行っただけで」


私の憤りを追いやるように低い声でまくしたて、瑞貴は沈黙した。

まるで憎しみでも込めるような強い視線で私を見据え、


「彼女なんか……っ」


目の前に立ち塞がったかと思うと、私の両肩を掴んだ。



そして――


ゆっくりと近づいてくる可愛い顔。




形よく隆起した鼻が触れそうになって、




「みず――?」 




言いかけた言葉をそのまま受け取るように、





瑞貴の唇が、私の唇を覆った。
 



それは柔らかな皮膚の重なり。




………キス――