「昨日、本屋に入っていくの見ちゃった。あ、安心して。お父さんには言ってないから」

「……ちげーし」


私を睨みつけながら、瑞貴がつぶやく。


「大丈夫だって。いまどき、受験生でも彼女くらいいて当然だし」

「ちげーって」

「あれ、もしかして内緒で付き合ってるとか? どっちにしても、瑞貴の成績なら――」

「ちげぇっつってんだろ!」
 

怒声とともに耳障りな音が響く。


叫んだ瞬間、瑞貴はテーブルの黒いお弁当箱を払いのけた。

床に落ちたお弁当箱が中身を飛び散らしてひっくり返る。


「なっ」


あまりの出来事に私は声を失った。