「父さんの新しいやつ?」
私のお弁当箱の隣、大き目の黒いボックス箱を見ながら瑞貴は猫みたいに伸びをする。
何気なく言ったらしいその問いかけに、私の心臓は一瞬だけ早まった。
「え、いや、それは……石川くんの――」
そう言った瞬間、弟の眉間に深いしわが寄った。
「イシカワ?」
突然険しい形相になり、
「一歌、まだあの男と――」
そんな一方的な言葉に、私もつい反論する。
「い、いいでしょべつに。瑞貴だって昨日かわいい子と歩いてたじゃない。彼女なんでしょ?」
「は?」
歪んでいた弟の眉が少しだけ持ち上がった。