久々に来た購買部は想像以上に混んでいて、戦場の様相を呈していた。

狭い教室にひしめき合う、明らかに定員オーバーな生徒たち。


「珍しいね、一歌がお弁当持ってきてないなんて」


制服の海におぼれそうになりながら、ユリが大きな目で私を見上げる。


「んへへ……寝坊しちゃいまして」


笑って答えた後、気付かれないようにため息を落とした。

今朝はどうにも集中できなくて、朝食を作るだけでいつもの倍の時間がかかってしまった。

そのせいで、今日は私もお父さんもお弁当なしだ。

瑞貴は学校の給食があるからいいとして――
 

考えた瞬間、右手の甲に夕べの感触が甦り、頬が熱くなった。