「覚えが早いって医局長が言ってたらしいですし。なにより顔がいいですよねー。美形の医者なんて、そうそういるもんじゃないし、競争率高いんだろうなぁ」
隣でつぶやくミヤちゃんの声が、半分も耳に入らなかった。
こちらに気付いた久野先生が、まっすぐ近づいてきたから。
「え、きゃー、こっち来た!」
ミヤちゃんが小さく悲鳴を上げる。
私も、固まったまま動けなかった。
首に聴診器をかけているけれど、白衣がまだ身体に馴染んでない。
そんな久野先生は、私たちの前に立ってぺこりと頭を下げた。
「沢井一歌さん、
――俺と、結婚してください」