全寮制の高校に通っていた瑞貴は本人による強い意向のもと、
卒業と同時にお父さんとの養子縁組を解消した。
それはつまり、名実ともに沢井の人間ではなくなったということで、
私にはショックな出来事だった。
それでなくても、瑞貴は高校生になってからあまり家に寄りつかなくなっていたのに。
後見人であり金銭負担もしていたお父さんには、たまに電話を入れていたようだけれど、私には一切連絡をくれなかった。
だから、だ。
瑞貴が通う大学に併設されたこの病院で働けば、
もしかしたら……。
一目見られるだけでもいい。
就職先を決めるのに、そんな考えが働いたことは否めない。
きっと久保さんにもバレていたんだろうな、と思う。