紅茶を勢いよく飲みほして、チハルが立ち上がった。
「あたしそろそろ戻んなきゃ」
「え、もう?」
彼女が昼休憩を取ってから、まだ15分しか経ってない。
「レセがあと1500枚も残ってんの。休日出勤すんの嫌だしさー」
「うわ、それは厳しい」
険しい表情を浮かべている彼女に、心底同情する。
ここの仕事内容はローテーション制で、チハルが行ってる関係機関への保険請求――いわゆるレセプト業務は、去年まで私が担当していた。
「病名が抜けてるって怒られちゃうしさー。じゃあちゃんとカルテに書いとけって感じじゃん。って愚痴ってる場合じゃない、じゃあね一歌」
右手をひらひらと揺らし、彼女は白い通路の奥に消えていった。
この仕事もなかなか大変だ。
少なくとも、悠長に『病院の雰囲気が苦手』なんて言ってる暇がないくらいには。