「彼は凄く素敵な人だったけど、どうしても結婚のイメージが湧かなかったから……」

「うっわー5年も付き合っといて」
 

苦い顔で指摘され、自分のことなのに「ホントだね」と笑ってしまう。


「あっちはもう三十路だったし、結婚するか分からないのにだらだら付き合うのも申し訳ないなあと思って」

「そういうセリフはふつー男の方が言うんだけどね」


チハルの呆れ顔に「そうかもね」と笑顔で答えた。




――理学療法士の久保さんと付き合うようになったのは、専門学校に入ってからだ。


高校3年のとき、下校途中にたまたま会ったのが始まりだった。

そのまま話をするようになって、進路の相談にも乗ってもらった。


何の目標もなく焦っていた私に、医療事務という仕事を教えてくれたのも彼だ。