「じゃあ、時間だからそろそろ行くよ」
駅のホームで時計を確認すると、瑞貴は見送りに来た私とお父さんを順番に見て重いバッグを持ち上げた。
「いってらっしゃい」
「がんばれよ、瑞貴」
私たちの声援を気恥ずかしそうに受け止めて「おー」とうなずくと、電車に向かって歩き出した。
遠ざかる背中。
いつの間にあんなに大きくなったんだろう。
追いかけたい衝動を抑えて、ただ叫んだ。
ホームいっぱいに届くような声量で。
「瑞貴!」
私の声に振り返った弟は、右のこぶしを真上に掲げる。
その顔は晴れ晴れしく、
「じゃあな、姉ちゃん」
太陽みたいに笑って、
弟は、自分の道を歩き出した。