「ごちそうさま」
無表情を貫いてさっさと2階に上がっていく息子をお父さんが無言で見送る。
「なにかあったか?」
「え……さあ?」
首を傾げるとお父さんは私に向き直った。
その真剣な表情に心臓が跳ねる。
お父さん、何か気づいてる――?
「実はな」
重々しく始まる言葉は違う意味で私を驚かせた。
「瑞貴の担任から連絡があってな」
「え……?」
「成績がひどく落ちてるらしい」
「……」
「瑞貴のやつ、何かに悩んでんじゃないかと思ってさ」
まああの年頃は難しいからなとのんびり言いながら、お父さんはビールのグラスをあけた。