「よく考えて瑞貴。あたしたちが付き合って、変な噂が立ったらどうする?」

「関係ないね」

「住みづらくなるでしょ?」

「関係ねーよ!」


徐々に苛立っていく弟に、少しでも分かってほしくて言葉を重ねる。


「お父さんだって、なんていうか――」


そう言うと、瑞貴はそれまでの憤りを消化させてしまったように言葉を切った。



「……父さんには、黙ってればいいよ」

「……」
 


会話が思った方向に行かなくて、もどかしい。
 

私は2人できちんと話し合いたいのに、瑞貴は話し合う必要はないと突っぱねてしまう。
 

どうすれば伝わるの――?
 

考えていると、弟がぱっと明るい顔をした。