現実を知るのは恐いけれど、だからといって逃げてばかりじゃ、
本当の意味で先に進むことなんてできない。
「目をつぶったままじゃ、道を間違えちゃうよ」
そう言うと、瑞貴の表情が歪んだ。
「間違えるってなんだよっ」
「怒らないで」
私に覆いかぶさったままの瑞貴の頬に、手を伸ばす。
白くて滑らかな肌は女の子みたいに綺麗だ。
「俺は一歌が好きだよ」
ぽつりと零された声は力強いけど、私の胸に届いた後は儚く消えていく。
長いまつげにどこか寂しさを漂わせ、弟はじっと私を見下ろしている。
守らなきゃ。
私の大事な人――