眉を下げる彼女の表情は、笑っているようでもあり、泣いているようでもあった。

傍らのユリも、悲しげな表情のまま黙って話を聞いている。


「世間は厳しいよ。姉と弟が付き合ってるとなれば、近所の人に変な目で見られるだろうし、下手したら一歌や瑞貴の進学や就職にも影響が出るかもね」

「え……」

「あんたたちの恋愛は、法律的に認められても社会的には認められないことだからさ。もしかすると、会社のライバルが、それをネタにあんたたちのお父さんを追い落とすことだってできるかも……」

「なに、それ……」

「会社にとって、世間体ってのは企業イメージにつながる重要な要素だから」

「……」

「あんたたち姉弟が恋愛をするっていうのは、つまりそういうことなのよ」


ひときわ強い口調で言うと、エリカちゃんはふうーっと息を吐き出した。

そして、目をそばめる。


「――ていうのが、まあ、一般的な大人の意見って感じかなー」