「一歌も瑞貴もまだ若い。この先心変わりするかもしれないんだよ。そうしたら、2人は今までどおり家族でいられると思う?」

「……心変わりなんて、しないよ」


そう言うと、大きな目が悲しげに細まった。


「そうかもね。……でも、そうじゃない可能性もある。悲しいことに、人の心は変わるのよ」


悲しい色が灯るその目には、恐いほどの説得力が滲んでる。


「他人だったら『さよなら』で済むけど、家族は一生縁が切れない」
 

エリカちゃんの目線は強い。
 
責められてるわけじゃないと分かっているのに、見返すことができない。


「血のつながりなんか関係ないんでしょ? 一歌と瑞貴は家族なんだから。生活を共有してきて、この先も共有していく。じゃあなおさら、若気の至りで気まずくなっちゃうなんて嫌じゃない」


「若気の至り……なのかな?」
 

床に目を落としたままつぶやいた。