「最初から全部、ゆっくり話せばいいよ。幸い、時間は腐るほどあるんだし? なんなら泊まってけば、夏休みでしょ」


そう言って笑うエリカちゃんに、妹が横槍を入れる。


「そういえば、お姉ちゃんはいつ社会復帰するの? 長い夏休みだね……」

「ユリ! 今はそれ、関係ない」
 

エリカちゃんが焦ったように叫んで、思わず笑ってしまった。




最初から全部、ゆっくりと。
 
私の母親が亡くなって、瑞貴のお母さんと再婚して――


話しているうちに、次第に心がほぐれていくような気がした。


不思議だ。

ただ話しているだけで状況はまったく変わらないのに、絡まっていた紐が少しずつ解かれていくように気持ちがほどけてく。


沢井家の大きな秘密。

といっても、故意に隠していたわけじゃないけれど。