「ちゃんと笑ってますか?」


病院の廊下で不意に話しかけられた。


「え……?」


目を上げると溌剌(はつらつ)とした久保さんの顔があった。



瑞貴の通院――最終日。

診察を終えた弟は先に駐輪場に自転車を取りに行っていて、

私は会計を済ませたところで脈絡なく問いかけられ、ぽかんと口を開けてしまった。


返事をしないでいると、


「最近、大声出して笑った?」
 

久保さんは少しだけ砕けたように微笑んだ。