ドアにもたれたまま、弟は泣き崩れるようにずり落ちていく。
「好きだ……一歌……」
吐き出された感情が、扉の向こうから流れ込む。
「一歌……、いち……」
瑞貴―――
ぶつけられた想いに涙がこぼれ、右手で口を押さえた。
いったい、あたしはどうすればいいんだろう。
罪悪感が増していく。
瑞貴からまっすぐ注がれる愛情に負い目を感じる。
私は瑞貴みたいにまっすぐにはなれない。
好きだという気持ちだけで、走り抜けることができない。
心に垂れ込めていた黒い雲が、拡散して、収縮して、徐々に形を成していく。
お父さんの声になって、私の胸に響く。
―― 一緒に瑞貴を守ってやろう――