瑞貴の言葉に心臓が脈打った。
 

血が繋がってないから大丈夫、なんて。
 
本当に、そういう問題なのかな?



私は瑞貴みたいに簡単には割り切れない。
 
もっと根本的な、大切なことを、忘れているような気がする。


「あ」
 

テレビの上の時計を見て、弟は立ち上がった。


「俺もう行かなきゃ。塾の時間」

「あ、うん……」
 

バスタオルをテーブルに放り出し、急ぎ足で階段をのぼっていく。  
細い背中はまだまだ成長途中だ。
 
子供ほど小さくはなく、かといって大人ほどがっしりしてるわけじゃない。
 

でも、きっと私も同じ。
 
自分で決めて行動したいけど、それが正しいかどうかは自信がないし、そもそも制限されている事柄も多い。
 


中途半端だ。何事においても。
 

窓の外はまだまだ明るい。
 
でも、私の胸には重い雲がどんよりと垂れ込めたままで、

向こうで光っているはずの太陽を感じ取ることができなかった。