「たとえ傷付く結果になったとしても、きっとユリの糧になるかな……」


断定的じゃない言い回しにはエリカちゃんの願望が滲んでいる。

妹のつらい恋を、止めたいのに、止められない姉の気持ちは――?



溜息をついているエリカちゃんと座卓に伏しているユリを見ながら、私はただ呆然としていた。
 
心の中に黒い雲が垂れ込めて今にも雨を落としそう。
 
ユリの涙が徐々に引いていくにつれ、私の心は反対に重くなっていく。


――誰かに、迷惑をかけるわけじゃないし―― 



エリカちゃんの声が、頭の中でこだまする。
 


ふと、


「ごめんね一歌」
 

涙目のユリと目が合った。


「黙ってて、ごめん……」
 

小さな肩をさらに縮めている彼女に、私は微笑みかける。


「……うん、分かってるから」
 

きっと、私がユリの恋愛を羨ましがってることに、ユリ自身が気付いてた。

だから、言えなかったんだ。