話が微妙にずれている上に、姉の横暴さが漂ってる気がして苦笑いしかできない。
 
でもユリの様子が明らかにおかしい今、エリカちゃんの明るさは救いになる。


「一応姉として、泣いてる理由を聞いたんだけど、全然答えないのよ。そんでカマかけて、男関係だな、と直感したこのエリカ様は男の偵察に行ったわけ」

「あ、体育祭準備の日……」
 

瑞貴が指を怪我して早退してきたあの日、エリカちゃんが学校に来てたことを思い出す。
 
パンツスーツ姿で、いきなり「ユリの男はどれ?」なんて、訊いてきたっけ。


「偵察、してたの?」

「そう。これでもあんた達より経験豊富だし? 一目見ればそいつがどんな男なのか、だいたい分かんのよ」

「す、すごい……」
 

妙に説得力があって感心してしまうけど、すぐにユリのことを思い出して口を結んだ。

小さな彼女は居間の片隅でうつむいたまま、一度も顔を上げない。