3人分の麦茶をコップに注ぎ、居間に運ぶ。
エリカちゃんはソファの真ん中で足を組み、ユリはラグの隅でうつむいていた。
2人とも興奮は冷めたようだけど、とにかく空気が重い。
「あ、あの、暑いね。冷房入れる?」
リモコンに手を伸ばすと、
「んーん、平気」
エリカちゃんがぼそっとつぶやき、ユリも黙ったまま首を横に振った。
まだ午後の早い時間で瑞貴は学校から帰ってきていない。
女が3人集まった居間には時計の秒針だけが響いていて、どこか暗い。
「えー……と、何が、あったの……?」
沈黙に耐え切れずに訊くとエリカちゃんがため息をこぼした。
「言うよ、ユリ。いいね?」
確認するように妹を見るけれど、ユリは沈黙したまま反応しない。