「うーやべー」
「やばい? 何が?」
「……」
きつく私を抱きしめたまま、弟は黙り込んだ。
そして、
「ま、いいよ。時間はたっぷりあるし。……これだけでも十分幸せだし」
私の顔を見て、優しげに微笑む。
「今んトコはね」
Tシャツから伸びた腕や足からぬくもりがつたわる。
肌がじかに触れ合うと、心からほっとする。
瑞貴も同じように幸せを感じてくれてることが、凄く嬉しかった。
このぬくもりに、ずっと触れていたい。
包み返すように、瑞貴の細い背中に腕を回した。
そのうち2人は溶け出して、お互いの境界線がなくなるくらいに混ざり合って――
そうなることを望むみたいに、
待ちわびるように。
しばらくの間、私達はそうやって、
お互いの温度を確かめ合っていた。