「ちょっと、前に進んでみようかと」


ゆっくり顔を近づけてくる。


き……きゃーー!


心臓が破裂しそうだった。
 

胸に手を当てたままキスをしようとする瑞貴が生々しくて、つい身を引いてしまう。
 
と、


「なんで、逃げんの」
 

至近距離で見つめられて、顔がこわばった。
 

じりじりと詰め寄られ私はもうベッドの端に上半身だけ仰向けになってる状態だ。
 
不意に、いつか瑞貴の部屋で見つけたものが脳裏をよぎった。
 

ジーンズのポケットに隠された、避妊具――


「だ、だめ!」
 

迫ってくる唇を両手で覆うと、形のいい眉がぴくりと動く。


「ダメ? 何が?」 

「――」
 

分かってる、くせに。
 

目で訴えかけると、瑞貴は決まりが悪そうに目を逸らし弁解するようにつぶやいた。