早めに終わらせたいと敢えてこの時間を選んだけれど、話はそう簡単に終わりそうもなかった。
石川君は私の腕を取ったまま、どんどん歩いていく。
その速さに、いつもはゆっくり歩いてくれてたんだなといまさらながら気付いた。
途中、何人かの知り合いに声を掛けられても石川君は答えない。
友達の多い彼がそんな態度を取ること自体珍しくて、
声を掛けた方はぽかんと口を開け、引きずられて行く私を不思議そうに見ていた。
無言のまま廊下を進み、階段をのぼり、空き教室に私を誘導すると、
石川君は廊下の喧騒をシャットアウトするようにドアを閉めた。
電気のついていない薄暗い教室は、蒸された空気に淀んでる。
「あちーなここ……」
近くの窓を開け放ち、石川君が向き直る。