「なに必死になってんの一歌」
その微笑に張り詰めていた空気が和らぐ。
それと同時に頭に上っていた血が冷めて、急に恥ずかしくなった。
「だ、だって、それって」
「コンドーム、だけど?」
言いながらポケットに隠したそれを再び取り出す。
「う……」
さっきは手にとって見たというのに、弟が持っているとなんだか生々しくて、つい目を逸らしてしまった。
「なんで、そんなの、持ってるの……」
高校生の私でさえ見たことがなかったのに。
……単に私が恋愛経験0だからかもしれないけれど。
「だから、友達にもらったんだって。どっちかっつーと無理矢理わたされ――」
「使ったこと、あるの?」
目を逸らしたままの質問に、一瞬空気が固まる。
それは普通に考えて、弟に尋ねるセリフじゃなかった。
女性経験はあるのか、と中学生の弟に問う姉。
なにを言ってるんだ、あたしは――