部屋に漂う沈黙に、心拍数が上がっていく。
 
瑞貴がポケットにあわててしまった物を、見なかったことにして部屋を出るのは簡単だけど……。


「ねえ……そ、それって」


つぶやいた私を凝視して、瑞貴は目を逸らした。


「普通、見て見ぬフリすんじゃないの」


そう言った顔は微かに赤らんでる。
 

私も同じように赤面してるに違いない。

けれど、気になるものは気になるのだ。


「どうし、たの? それ」


買ったの?

中学生なのに?

いつ?

ていうか、まさか、使ったことあるの?
 
誰と?
 
ていうか、それって――



口にせずに考えていると、


「もらったんだよ」


むすっとした表情で言い捨てる弟に、すかさず食らいつく。


「だ、誰に?」


まさか女の子から――?
 

今にも掴みかからんばかりの私に目を戻し、瑞貴は小さく笑った。