まだ湿った髪をバスタオルでわしわしと乾かしながら、細い背中が離れていく。


「おやす……み」


言いながら、私は小さく震えていた。

胸が絞られるように痛む。



頬をつたう――



ふいに振り向いた瑞貴が、私を見て顔色を変えた。


「一歌?」


私は伝い落ちるしずくを手でぬぐった。


「なに泣いてんだよ――」

「泣いて、なんか」


言葉とは裏腹、身体の奥から自然に湧いたみたいに、涙が勝手に溢れる。

制御できない感覚に私は大きく戸惑った。


「泣いてんじゃん。どうしたんだよ」


本当に、なんで涙なんか――


階段に向かっていた細い身体が踵を返してソファに戻ってくる。

ぼろぼろと落ちていく涙は、弁解のしようがないほど次々に溢れては絨毯に染みをつくっていく。