彼方は、ハッと我にかえると。

ギッと哉を思いっきり睨んで、哉から離れた。



「・・・・・・事実は変わんねーよ、彼方。」


「・・・・・・・・・知ってる。」

静かな声の応酬。



不意に彼方は藤原の方を見て、ぺこりと頭を下げた。


「陽、悪い。さっきからずっと・・・

ちょっと俺、心の整理できてなかったっつーか・・・。


とにかく、マジでごめん。」



心の整理、か。


俺は昨日哉が呼び出されたことを思い出した。



何かあったんだなー・・・。




藤原も、何かあったことを察したらしい。

スッと彼方に近寄った。

そして、彼方の頭にゴツンと拳骨を落とした。


「いっ!?」



彼方が前かがみに倒れそうになるのを、藤原はそっと抑えた。



「・・・・・・さっきので許してやる。」


ぼそっと呟かれた言葉に、彼方が頷いた。


「・・・・・・サンキュ」



おそらく、彼方も、仲間の誰にも言ってないのだろう。