―・・・と、まぁこれが私と子犬クンの出会い。
で、再会したわけなんだけど・・・さ。
ホント、変わりすぎだってば。子犬クン。
「もはや子犬じゃない・・・」
「そうか。それは嬉しいな。」
ふっと微笑む総長さん。
わあああ////
え、笑顔が甘い~!!
あぁっ・・・
なんでイケメンなんかになってんのよぉ!
無駄にドキドキすんじゃんか!
「えーっと、総長さん・・・」
「陽でいい。」
「・・・陽?」
「俺の名だ。」
ああ~
そーいえばりか先生も言ってたな。"陽"って。
「んじゃ、陽!」
「ん。」
「お願いがあります!」
「お願い?」
「私が女だということは秘密にしといてください・・・」
杞憂さんに嫌味言われまくるっていうか・・・
ヘタしたら退学だし・・・
家ないし・・・
とにかくヤバイんだよね・・・
「・・・そもそも、なんで女のお前が男子校に?」
あー・・・
そこっすよねー
「諸事情があるっていうか・・・流れで?」
「・・・どういう流れだよ。」
ははははは・・・・・
「えーっと、親の友人が理事長やってるのがここっていうか・・・」
「・・・じゃあ、お前理事長の子供じゃないのか。」
「ええ、まぁ、そうなんですよ。」
「本当の苗字はなんだ?」
「え?倉本ですけど・・・」
「・・・倉本?まさか、お前・・・」
陽が何かを言いかけた時・・・
ガサガサッ
草むらから音がした。
反射的に振り向く。
そこでは・・・
紅い髪のイケメンが、草を掻き分けてこちらへ来ようとしていた。
・・・誰?
なんか、陽に劣らず、存在感がハンパないんだけど・・・
そして、はっとした。
紅い髪。
白狼の総長の陽に劣らない存在感。
まさかこのイケメンさん・・・
「どーもぉ。紅狼総長、土井翼(ドイ ツバサ)只今登校しましたー」
・・・やっぱり!
紅狼の総長さん!!!
・・・ってか・・・
土井?
土井ってまさかあの、大財閥の土井なのでは?
藤原と並ぶ、由緒正しき家の・・・
「あ、そうそう。俺、盗み聞きしちゃった。」
・・・え?
盗み聞き?って、まさか・・・
「君、女なんだってね♪」
私をばっちり見ながらにっこり笑った紅狼総長さん。
・・・うっわぁ・・・
まじで?
いきなり2人の総長に知られたよ・・・
脳裏に浮かぶのは、黒い笑みを浮かべた杞憂さん。
いやあぁぁあああぁああああ!!!!
「ひ、秘密にしてください!」
死ぬ!
私死んじゃう!!
「んー?どうしよっかなぁ。幹部には言おっかな♪」
・・・・・紅狼総長ー!!!!
「俺も・・・幹部には言おうと思う。」
・・・・・白狼総長ー!!!!
お前もかっ!!!
私死んじゃう・・・
「まぁ、なによりも、素顔が見たいよねぇ♪ってことで。ほい☆」
「え?・・・あ!」
気がつけば、紅狼総長にウィッグをはずされていた。
な、なんて奴だ!
不意打ちするなんて!!
・・・・・・・・・・・ん?
あれ?
なんで・・・
「なんで2人してそっぽ向いてるんですか?」
なんか2人そろって、私から顔を背けてるんですけど・・・
あと、心なしか顔が赤いような・・・?
気のせい?
「・・・マジかよっ。綺麗すぎねぇ?何あの顔・・・」
「・・・5年前より、さらに綺麗になってる・・・・・」
「・・・・・何呟いてんですか?」
声が小さくて聞こえない・・・
「「なんでもないっ!!」」
・・・お前等本当に仲悪い暴走族の総長かよ。
息ピッタリなんですけど。
「なんでもないならいいけど・・・」
もしかしたら、お互いへの呪いの言葉かもしれないしね。
聞かない方がいい!
ってか、それよりも・・・
「マジで秘密にしてください!!」
「幹部には言う~♪こんなおもしろそーな話、言わないわけないじゃん」
「幹部に秘密は無しと決まっている。」
紅狼総長!あんたテキトーすぎっ!!
白狼総長の陽は固すぎっ!!
「っつーかさ・・・」
紅狼総長が甘く微笑む。
「君、綺麗だよね。俺・・・一目惚れしちゃったかも。」
ふっと、私の耳に吐息を噴きかけながら、甘い声で囁く紅狼総長。
ふぁああぁああぁあああ/////
心臓が爆発するぅ・・・
そのカッコイイお顔で・・・
「くどくなっ!!!」
私は怒鳴った。
恋愛経験値が低いんだ!
「・・・土井。やめろ。」
陽が低い声が不機嫌に言う。
そして・・・
!!!!!
私を後ろから抱きしめた。
「よ、陽!?」
いきなり何をする!?
「俺は、本気なんだ。」
陽が低い低い声で言う。
・・・何に本気なのさ!
「へぇ。そーういこと、ね。」
紅狼総長!
何が"そーいうこと"なんだ!!
「・・・でも、俺も本気になっちゃうかも。」
紅狼総長は、それはそれは真剣な顔で・・・
陽と・・・
なぜか私を見てきた。
私に向けられた視線が・・・
熱をもっていると思ったけれど・・・
きっと気のせいだ。
だって、こんなイケメン君が、私を・・・なんて、ありえないもん。