私は最強ビンボー女!

りおさんの体と私の体が密着している。

なんで・・・こんなことにっ!?


私はただ2人の喧嘩を終わらせてって言っただけなのに!


なんでこうなるの!?



心臓が破裂寸前な、極めて危険な状態の中、私はりおさんから離れようと四苦八苦した。


だけど、りおさんの力は強くて・・・



「青菜・・・・・」

そぅっと耳元で囁かれる。

「2人の喧嘩、終わらせたいんだろ?ちょっとくらい我慢しろよ・・・」

色気のある声音。


あぁ・・・もう!

私じゃなかったら、鼻血ブーで、倒れちゃうよ!!!


「コレで終わらせられるわけ「あるんだな。」



・・・・・・・・・・はい?


りおさんはキッパリと断言した。


「どういうことですか?」


私が聞いた時・・・




グイッ




誰かにもの凄い力で体を引っ張られ、私とりおさんが離れた。



助かった・・・


そう、ホッとしたのも、束の間。




「何やってんだよ・・・・・」

私の頭の上には、般若の顔をした陽が殺気を出しまくっていた。


怖っ!?

なんでこんな怒ってんの!?


慌ててりおさんの方を見れば、今度はりおさんのよこに般若の顔の翼がいた。


般若が2人もいるんですけど!!!

りおさん、コレはどーゆーこと!?



「青、ホラ。喧嘩終わったぜ☆」


いや、終わったけどね!?

確かに終わったけどね!?

確実に他の問題ができたよね!?



「なぁ・・・何やってたのかな?」


翼、笑顔が怖い・・・般若消えたけど、笑顔、黒い・・・


「何って・・・・」

なんで私に聞く?


「そこらへんは、りおさんに・・・」


遠慮がちに言えば、2人ともバッとりおさんを見る。



「抱きしめてた。」

さらっとりおさんは言った。


途端、2人がりおさんに詰め寄る。


「どういうことだ!」

「説明しよーぜ、先生。」



うわぁ・・・迫力ある・・・・

感心しつつ、そういえば、と思った。


なんでコイツら、こんな怒ってんの?




・・・・・???

そういや、ホント、なんでだろ?


私が怒るのならまだしも、なんでコイツらが?

あれ?ココは私も怒るべき?


「青がさ。2人の喧嘩を終わらせたいって言ってさ。そのために抱きしめた。な?お前ら喧嘩終わらせただろ?」


「「・・・・・・・・・・」」


う~ん・・・怒るべきかなぁ・・・

でも、一応2人の喧嘩は終わったんだよねぇ・・・。



「にしたって・・・さすがは青だな。2人して、かよ。」


「「!!!!!」」


・・・・・・う~ん・・・

ま、許してやるか。うん。



「「な・・・なんでっ・・・・」」


「般若になった時点でバレバレ。な?青。」



「・・・・・・・・・・・・・あ?何の話?悪い、聞いてなかった。」


いつの間にか違う話になってる?

今、何の話?


「「「・・・・・・・」」」



なんで皆して沈黙!?



「・・・・・・ま、いーや。青、とにかく気をつけろよ。色々・・・な。お前、鈍感っぽいから。」


「鈍感じゃないです。」


? 色々って、なんだろ??





―日曜日―


ついに、私、倉本青菜(15歳)人生初の合コンがやって来ました!



ココは、カラオケのチェーン店の店内。


私は、昨日佐奈に強制的に買わされたワンピースを着ている


膝上5センチの黒いシフォン生地で、袖のところがヒラヒラしている。


で、そのワンピースに佐奈から借りた白いベルトをした。


他に、青い宝石のネックレスをつけている。



佐奈は白い丸襟の半袖ブラウスに、薄桃色の花柄のミニスカート。

ピンク色のハートのイヤリングをしている。


似合っていて、もの凄く可愛い。

佐奈、私、佐奈と合コンなんて、彼氏作れないかも・・・



なんて思っていると、男性2人が登場。



「あれ?早いね。」

「ごめん!待たせた?」


感じのよさそうな好青年って印象。

どっちもニコニコしてる。そして、カッコイイ。


「いえ、そんなこと・・・」

緊張した私は小さくモゴモゴと答える。


「そんなことないですよ?気にしないでください。早く着いちゃっただけなんで・・・」

ニッコリと佐奈が可愛く笑う。



・・・・さすが・・・

佐奈、笑顔可愛いっ!




「それより、座ってください。」

佐奈が笑顔で言う。


「あ、うん。」

「そうだね。」

2人とも、ニコニコ笑いながら座る。







――そして、合コンが始まった――――



「ホラ、青菜ちゃんも歌って歌って!」

メガネをかけている方・・・えっと、確かリクさん?が、言ってくれた。


でも、私・・・


「あの、普段テレビとか見なくて、その、歌える曲が無いんです・・・」


あぁ・・・最悪。

そもそも、テレビなんて家には無かったし。今はあるけど、節約しなくちゃだし・・・・・


カラオケなんてのも、人生初だったのに。

だいたい、歌えないなんて、邪魔なだけだよね・・・。



ずぅーんと沈んでいると、佐奈が私の肩をポンッと叩いた。

「じゃ、青菜はタンバリン係ね♪」


「・・・・・タンバリン?」


「そ。歌にあわせて叩くの。いいですよね?」


佐奈は最後のはリクさんと・・・確か、タツさん?に向けて言った。



2人はニッコリ微笑みながら、コクリと頷いてくれた。


「全然いーよ。」

「俺も異議なし。」




・・・・・・・・・・・・で。


シャンシャン♪


ご機嫌でタンバリン叩いてます!



「ねぇ、青菜ちゃん」

リクさんが話しかけてくれた。

順番待ちかな?今は佐奈とタツさんが一緒に歌ってるしね。


「はい?」


「青菜ちゃんって、ハーフとか?」


「え?違いますよ?」


「え、でも、瞳が・・・」


「あ、この瞳はお母さん譲りなんです。って言っても、私、純粋な日本人なんですよ~。」


「・・・もしかして、代々瞳はコバルトブルーなの?」


「さぁ・・・でも、その可能性は高いですね。」


「へぇー!なんかスゴイね!綺麗だし、いいなぁ。」


「ヘヘ・・・ありがとうございます///」



ほんのり頬を染めて照れていると、バッとリクさんが顔を背けた。


・・・・・・・・・・・・・?



「リクさん?どうしたんですか?」


「・・・ヤバイ・・・・・綺麗すぎなのに、しかも可愛いって・・・/////」



・・・・・・・?

なんか言ってるけど、声が小さくて聞こえないや。





ま、いっかー。


私はニコニコとご機嫌に笑っている。


携帯の電源は切っている。

寮を出たら、杞憂さんからガンガンかかってきて、うんざりしちゃったんだ★


杞憂さんがなぜ教えても無いのに私の携帯番号を知っているのか、と、一瞬疑問に思ったけど、答えはすぐに出てきた。


糞親父、だ。


勝手に私の携帯番号を教えたに違いない。



で、杞憂さんからガンガンかかってくるのは、やっぱり、前に不法侵入してきたあの男達を警戒してだろう。


だけど、今日は譲れない!


私の彼氏ができるかどうかの賭けなんだ!!


お金も無いし、今日しか合コンなんてできないんだから!

今日が勝負っ!!!



勿論――彼氏ができたとしても、結婚する気なんて、ないけどね。


どんなにいい人でも・・・・・私は絶対、結婚はしない。





家庭なんて、作らない―――――。



私は、1人で生きていくのだから。





「青菜ちゃん、そのワンピースすごい似合ってるよ。」

リクさんが微笑む。


「ありがとうございます。」

私も微笑み返した。




「ホント、可愛い・・・・・」


リクさんが、私を見つめる。

熱っぽい視線。

揺れる瞳。






―――――海・・・・・。



―ドクンッ―





私、今、ソレを思い出しちゃう?


そんなんじゃ、一生彼氏なんて、作れないよ?


心の中で、自分をせせら笑う。




「青菜ちゃん・・・・・」


熱っぽい視線。揺れる瞳。近づく顔。





―――違う。

今、この人が呼んだのは私。お母さんじゃない。

そもそもこの人は、糞親父じゃない。

涙なんか、溜めてない。



だから、安心しなよ、私・・・。




―――――海・・・・・。





私は、そんなに、弱くないはずでしょ?



リクさんの顔がどんどん近づく。


あと数センチで唇が触れる――







バキッ!!!!!!






何かが壊れる音で、私とリクさんは我に返る。




何事!?




バッと音がしたほうを見れば――






あの、スーツにサングラスの男達が、ドアを蹴破って入ってきていた。








・・・・・マジですかぁ・・・


彼氏できる夢、これにて終了・・・じゃんかぁ・・・



ガックリと項垂れた。





・・・・・なんで・・・


なんでココにいることが分かったんだぁーー!!!!!



大声で、叫びたくなった。